マルサの女(1987)という日本映画の感想レビューをしたいと思います。
日本映画という文言を聞くだけで今では期待すらしないかなりさみしい時代になりましたが、過去に日本には伊丹十三というとんでもない映画監督がいて、とんでもない作品を打ち出していたのです。
そんな監督が一躍日本中に名前を広めたのが「マルサの女」です。
脱税者とそれを許さない国税局員の熾烈な攻防を描いたヒューマンサスペンスです。
徹底して調べ上げられたネタを元に作りこまれた2時間は、120分でも足りないくらいの大ボリュームであまりのリアリズムに一気に引き込まれます。
しかし伊丹作品の凄いところは、徹底したリアリズムを恩着せがましく描かない点です。
少し茶化したようなコメディタッチも含め、ストーリーを視聴者に押し付けずに引き込むテクニックがあります。
一見この映画の内容を見ると「脱税者=悪」となりそうなものですが、脱税は誰しもがしているグレーなところで、必死に脱税する姿を少しおかし気に愛嬌の中で描きます。
くすくすと笑いながらも、内容は根拠に基づく物で、笑いながらもきっちりと話は進み納得していく。
その中で大きな流れの先にも向かっていく、その手腕は本当に日本映画の鏡でした。
低予算の中でいかにハリウッドに対抗していくか、日本映画はどのように生き残っていくか。その答えが伊丹映画に込められています。
今となっては売れている原作をただ垂れ流しに映画化する、監督はその元作品に大きな興味もなく撮る、これにより今は日本映画は地に落ちています。
今こそ伊丹十三映画を見習い、徹底を越した下調べのもと、本物を突き詰めることが日本映画が唯一生き残っていく方法なのではないでしょうか。
伊丹映画の名作マルサの女はAmazonPrimeでも無料で見れますし、DVD blu-rayでも出ていますので、是非一度ご覧ください!